アカデミック・インターンシップ:神戸大×松蔭中高で企業の収益について学ぶ。
神戸大の先生方が松蔭中高で、アカデミックインターンシップ授業を実施されました。
アカデミックインターンシップとは?
大学の高い専門性を持つ先生たちが、中高に訪れて、“大学さながらの授業を行い、中高生が大学での専門的な学びや探究を体験するプログラム”
実施内容とその様子
実施内容は、以下の5つのレクチャーを受けて企業の収益を考える視点を得て、アウトプットはコロナ禍前後の企業の売り上げについて考察すること。
①「儲けとは何か?」、②「上場企業とは何か?」、③収益性の計算方法
④実際の企業分析の事例、⑤情報の収集方法
最終日には神戸大を訪れ、現地でプレゼン&キャンパスツアーも行っていただきました。
【プレゼン(生徒作成)のスライド】
【生徒振り返りコメント】
私たちは授業で”金融”の授業がなかったので少し苦手意識を持っていましたが、授業がとても楽しくて苦手意識がなくなりました。授業では特に、コロナ渦とコロナ渦前後の営業利益率の比較をするのがとても楽しかったです。授業を受けて、ものの見方が少し変わった気がします。値段を見て、ただ高いなと感じるだけではなく、なんでこんなに高いのだろう?人件費のせい?それともコスト?たくさんの視点から考えれるようになりました。
一番最初に行った連携授業でファイナンスについて、詳しく教えてくださいました。以前から株や投資について知りたいと思っていましたがあまりわからず引きずっていたところわかりやすく説明していただき、興味深く、嬉しかったです!
授業ではコロナ禍による影響で営業利益が増減した企業を調べるという、調べたことのないトピックを調べることができ、とても興味深かったです。予想とは違う結果になって驚いたことが大事であることがわかりました。今までやってきたプレゼンの見せ方を大学の先生に実際にコメントをもらうことで、どういう見せ方が良いのかもよく気づかされました。今後、この経験を生かしてより上手にプレゼンをしたいです。そして、多角的な視点で物事を考察したいと思いました。
生徒たちのコメントを見ていると、普段とは全く違う勉強だったにも関わらず、興味関心があがっているのが良く分かる。また、ビジネスという目線から、物事をみることを知り、多角的や新しく物事をみる視点を得たということが良く分かる。
実施の目的や背景(教員)
①金融教育の大切さ
正直、中高の教育において今回のような企業の収益について具体的に見方を知り、考える機会というのはほぼない。
中高の教育で特に思うのは、この金融や経済という視点が特に弱いと感じること。世の中はSDGsというが、SDGsを考えるには、社会・経済・環境の3つのバランスが必要という。その考えには賛同するが、どうしても経済面の部分がおざなりになる。22年度から高校の家庭科に金融教育の内容が入ったのも納得できる。
実際、その弱い部分をどうにかしたいと思い試行錯誤し続け、担当の松蔭高校GLでは社会貢献もかねて、自分たちで商品を開発して販売するプログラムを導入した(女子高生起業家プロジェクト)。といっても、そのプログラムも中高の教員が行う訳で、担当している私も「1」から生徒とともに学んでいる。そこにこのようなより専門性のある授業が加わることで、まさに子どもたちが今、必要としている知識や情報を得ることができた。
生徒のコメントにもあるが、今の社会がこれだけiDeCoやNISAを含めて、投資や金融についての知識を大人に求めている状況があるのだから、もちろん中高生たちも、株や金融についての知識が必要なのは肌で感じている。そういう中高で手が届きにくい部分を、専門性がある先生が担当し、知識や企業の収益についての物の見方を教えてくださったのは、非常に教育効果の高い授業だった。
②専門的な学びを体験する重要性
今後の社会はSociety5.0やVUCA(劇的な速さで変化が起こり、将来の予測が困難な状況)と言われている。AIの活用が進み、AIに任せられることはAIに任せて、全体を平均的にできる人材ではなく、より高度な専門性を持つ人材が必要とされていると言われている。
個人的にもそう思う。
先日、カナダに高校1年GL生が、1ヶ月間の海外研修に出かけた。そこの公立高校で提供されていた選択科目は、Wild Life (自然環境について学ぶ)やCosmetology(化粧学)といったより専門性の高いものばかりであった。日本の日本史や世界史、芸術選択(音楽・美術・書道)という選択ではない。その一方で、昨年度訪れたフィリピンの小中校で実施されている内容は、従来の日本型の一斉授業で、一気に知識や技能を伝えて、全体の教育レベルを引きあげていく手法だった。
その国その国の状況があるので、どちらが良いという判断はない。今の国の状況をみて、教育手法はもちろん変わる。
ただ今の日本の状況を考えるならば、wifiやICT機器のデジタル環境のインフラは先進国と同様に整っているので、方向としてはカナダのように将来を見据えて、早い段階で専門的な知識を体験して、今度の進路(人生設計)では専門性を意識してみにつけていく、という考えを持つべきだと思う。
今回のような専門性の高い授業を受けることで、子どもたちはもちろん自分の進路について考えるようになった。きっと、何人かは社会情勢と企業の動きに興味をもった。そういう専門性と実社会が連携するような学びをたくさん体験し、将来を見据えて進路につなげていくという活動が、今まさに求められている教育活動ではないかと感じる。
御礼(神戸大)
今回、中高生のアカデミックインターンシップ授業を担当してくださいました、神戸大の高田先生と高槻先生。
生徒の振り返りからも非常に多くのことを考え、学んだことが分かります。このような機会をいただけたこと、改めて御礼申し上げます。
ありがとうございました!!